彼らしくない焦った口調
「触んなって言ったじゃん。聞こえてたでしょ?」
「だって触ってみたかったんだもん…」
「ふーん…そう…」
怒ってる
「…ごめんなさい」
あーあ
もうだめだ…
フードコート?
学校?
コーヒーをこぼしながら紙コップをゴミ箱へ
謎に開けた間切りのない公共トイレで彼女に出会う
いきなり携帯を奪われ、クンニされる。
小便を精液のように浴びた幼い少女。
携帯を盗み逃げだす彼女を必死に引き止める。
奪っては奪われの繰り返し。
負けてはだめだ。
妹に助けを請い両親に電話することに。しかし繋がらず代わりに留守電が。
「今帰宅中あと20分で着きます。」
あと20分暴れる少女を押さえていないといけない。
いっその事、警察に電話するか。
なんて言いつけよう
窃盗?器物破損?
「別に携帯ぐらい取られてもいいじゃん」
「…それもそうか」
八畳間にはなぜか両親と祖父母が揃っていた。彼女はその元へ行こうという。
おかしい、と思った。
留守電の内容と相違する。張り詰めた空気。
「さや、戻ろう!」携帯を握りしめリビングに戻ると母がストレッチをしていた。
やはり幻覚だったか…。
この街は、久山田はなめられてる。
坂の下の学校は知らないやつらで溢れてる
町民や学生は権力を奪われている。
彼女と私のように。
少女を隠すように私が前に立つ
見せられないのは見られているから
気がつけば服だけが残り、少女の姿がない
幼い子どもに気を取られたか
振り向くと建物から走って出て行く姿があった
全速力で走って追いつき地面にたたきふせる
砕けて地面に落ちるリボンのアクセサリー
それを拾い集める
「かわいそうな子…」
両手を拘束し左脇腹で押さえつける
幼い子どもたちが列になって歩く
ちょうど卒園式の様にお母さんたちと一緒に
彼女と歳が変わらないような子ばかりであった
対照的に地面に伏して彼女は叫ぶ
「絶対集めててよ!絶対よ!」
目が覚めると左腕に少女を押さえつけていた感覚だけが残っていた。
===================
少女は私なんだと
少女は私の携帯を盗む
私の大切な人とのつながりを盗んでいく
取り返そうと暴れる少女を抑えつける私
そしてそんな少女をかわいそうだと言う
同じ時間、同じ歳、同じ少女
でも現実は卒園児と窃盗犯
部屋の中と外
列をなして花道を歩く少女と、地面に押さえ付けられ暴れる少女
無慈悲なコントラスト
アクセサリーは自己顕示欲・自分を表現すること
ピンクのリボン型のイヤリングは恋愛
「あとちょっとで幸せだからもうこれでさようなら」
積み上げきたものが終わり、そして解放される
そう失うことは解放されること
だから何もこわくないはずだよ
もう君と過ごせるのは数日だね。
バイバイもまたねも言えないまま下校時間。
いつものことだよ。僕は慣れている。
…でも少女は私に、つまり私は私にその壊れた可愛いを集めててねって言った。
絶対に集めて持っていてね、と言ったんだ。
0コメント